リツィタル Licitar & マデンジャヒ Madenjaci & パプレニャク Paprenjak
南ヨーロッパのバルカン半島に位置するクロアチア共和国では、15世紀 神聖ローマ帝国(現ドイツ)のニュルンベルクからレープクーヘンが伝わると、北部のザグレブ一帯で盛んに生産されるようになり、そこから50Kmほど北『Marija bistrica churchマリア・ビストリツァ教会』の門前では巡礼菓子として広く知られるようになりました。
さらに200年ほど前から独自の進化を遂げて、真っ赤なボディーの『Licitarリツィタル』そして『マデンジャヒMadenjak』、『パプレニャクPaprenjak』と3種類に分化して今に至ります。
左から『リツィタル』『マデンジャヒ』『パプレニャク』
Licitarリツィタル
リツィタルはハート・赤ちゃん・鳥・キノコ・蹄鉄・馬・花輪と様々な形をした赤く艶やかなボディーにカラフルで立体的なデコレーションが施されるひときわ陽気なハッピースィーツです。
中でも赤いハートの真ん中に小さな鏡が付いたものは『リツィタルハート』と呼ばれる縁結びスィーツで、男性は『リツィタルハート』を用意すると、鏡に思いを寄せる女性を写しながら「私の心にはいつもあなたがいます」と愛を告白… 長年に渡って幾多の縁を結んできたのです。
近年はボディーの色も緑や黄色、白…と多彩になって、クリスマスにはツリーを飾り、復活祭には卵やウサギのモチーフが登場 カップルの名前を入れて結婚式の引き出物に使われ、バレンタインデーや洗礼のお祝いプレゼントとしても喜ばれ、さまざまな思いや願いを込めて気軽な贈り物にも広く活躍。50年ほど前から食べられることは少なくなり、装飾品としての期待が多くなっているようです。
伝統的なレシピに従って作られるリツィタルは、生地には小麦粉・蜂蜜・重曹・卵が使われ、 鮮やかな色の表面コーティングは蜜ろうやゼラチンを食用色素で色付けして使います。ラインやドット・花などの模様は卵白と砂糖からなるアイシングで描かれ、使われるものは全て食用の材料ですから、もちろん食べられます。
とはいえ、近年 セラミック製のリツィタルも出回っていますから、見極めて…。
木型レリーフからシュガーデコレーションへ
中世期リツィタルを含むヨーロッパ各地で作られるジンジャーブレッドは、モチーフが彫り込まれた木型に生地を押し当て、凹凸のレリーフを付けて焼かれていましたが、1800年代半ばには、従来の材料に膨張剤を加えてこねた生地をのばして広げ、抜き型で型抜きして焼かれるようになります。
そこで、平らになった表面を赤色の食用色素を加えた蜜ろうやゼラチンでコーティング!その上にカラフルなアイシングを使って立体的な装飾を施したものが考案されると評判をよび、次第にクロアチア リツィタルの象徴的な存在に…。
赤、白、青、緑、黒と鮮やかな色使いはクロアチア女性の民族衣装に通じ、この時期リツィタルは民族の文化を映す姿になったと言えそうです。
*抜き型 … 生地を平らに伸ばしてから型抜きするために使われます。
赤いボディーもリツィタル
1900年代前半に撮影されたリツィタル売りの屋台です。モノクロなのが残念ですが、すでにこの頃のリツィタルは鮮やかな赤いボディーにカラフル模様が施され、中心に鏡が張られたものも見えます。地域特産の蜂蜜や蜜蝋から造られる蝋燭やドリンク製品も並ぶ屋台は甘くスパイシーな香りが漂い、絵のように美しいと人気を集めました。
by https://www.licitar.hr/en/about-licitars
こちらは2024年5月にマリア・ビストリツァ教会で撮影した写真です。 参道に延々と並ぶ屋台に『リツィタルハート』! そして マデンジャヒがたっぷり入った袋が山積みになって、その人気ぶりが伺えます。
現代 リツィタルはクリスマスツリーを飾り、カップルの名前を入れて結婚式の引き出物に使われ、バレンタインデーや洗礼のお祝いプレゼントとしても喜ばれ、復活祭にはエッグやウサギのモチーフも登場して、年間を通しておめでたい、記念の、嬉しいシーンに欠かせないものになっています。
1950年代 工芸品への関心が薄れた時期がありましたが、その後見直され、リツィタルは400年以上におよぶ歴史が評価され、2010年ユネスコ世界文化遺産に登録されました。
全て手作業!5週間かけて仕上げます!
ザグレブ市街から車で30分ほどの Sambor サモボールに工房を構える 『Medicarna ARKO』さんは、クロアチア国内で20軒しかない国家公認のリシタール店 明るくて笑顔が素敵な女将BRIGITAさんに迎えていただき、工房内を見学し、お話しを聞くことができました。
それによりますと、材料としては、生地には小麦粉・水・蜂蜜・砂糖・重曹・卵
ボディーを覆うデコレーションは、ゼラチンに食用色素を加えて着色した染料が用いられ、
作業工程は以下の通りです。
⑴ 生地の材料を合わせ、数日間おいて熟成させます。
⑵ 生地を伸ばし、型を抜いたらオーブンへ…
⑶ 180℃ で6分焼き、冷めるのを待って紐を挟んで貼り合わせ、2週間おいて乾燥させます。
⑷ 染料に漬けて着色コーティングしたら、再び2週間乾燥…
⑸ デコレーションを施し、鏡を貼って、さらに1週間乾燥させて出来上がり!
以下のアドレスから『Medicarna ARKO』さんが Face bookにアップされている制作過程をご覧いただけます。
https://www.facebook.com/lovesamobor/videos/934104190088437/
今でも昔ながらに店舗を持たず、催事や公園でワゴン販売をするのだそう… 明るくキュートなワゴンからは甘く香ばしい香りが漂って、まさに✨ハッピーパワースポット✨ですね。
マデンジャヒ Madenjaci
リツィタルの生地を丸めて焼くようになったのが『マデンジャヒ』
袋詰めにして売られているものをスーパーやワゴン販売で買い求めることができる、美味しくて健康的そして安価なおやつ菓子ですが、お誕生日やクリスマスには、家庭ごとに伝わるレシピに従って子供たちも参加して手作りする伝統も。
蜂蜜酒GVIRCとリツィタルと並ぶ袋詰めされた円盤型のお菓子がマデンジャヒです。
パプレニャク Paprenjak
クロアチア語の胡椒「papar」を名に冠したPaprenjakパプレニャクはその名の通り、胡椒をはじめとしたスパイス多めの生地を、モチーフを彫り込んだ木型に押し入れ、凹凸レリーフを浮かび上がらせて焼く型押しビスケットです。
モチーフが浮き出た姿は、一時姿を消した型押しスタイルが、新たなレシピと型で戻ってきたもの。
地中海やアドリヤ海地域特産のくるみやラードをたっぷり加えるのが特徴で、独特のほっくり感が病みつきに…。クリスマスが近づくと、子供達もお手伝いして伝統モチーフが彫り込まれた木型を使って、パプレニャクを焼くのが恒例です。
ザグレブwatching
近年観光地として注目を集めるクロアチア共和国 その北西部に位置する首都ザグレブは、青いトラムがコトコト走り、正午には13世紀に建てられた見張り塔から時報を知らせる大砲が放たれ、夕刻には長い点火棒を持った点灯夫さんがガス灯に火を灯して廻るノスタルジックな街です。
独立を果たした今 平和で美しい国クロアチアが実現し、活気に満ち、自由を謳歌するザグレブですが、その歴史は強大な勢力からの支配と、そこからの独立の繰り返し 12世紀に隣接するハンガリー王国の一員となり、その後は1981年までオーストリア・ハンガリー帝国に従属 その間幾度となくオスマントルコの侵攻をくいとめてきた過酷ともいえる歴史の積み重ねがありました。
頼もしい女性像が出迎えてくれる『ドラツ広場』は、パラソルを広げた屋台が並ぶ市民の台所 蜜源の花ごとに瓶に詰められたMed:蜂蜜は、黄金色から琥珀色までどれも美しく、味見も気軽に応じてくれる楽しい屋台
この広場に隣接するお土産屋さんに置かれていた素朴で愛らしい手彫りの木型…両面に彫りがあるので6種類のパプレニャクを焼くことができ、簡素な包の中にレシピも添えられていました。