ビーバー … スイス ザンクトガレン …
ザンクトガレンは、スイス東北部に位置し、チューリッヒから急行列車利用で1時間余り ドイツとの国境になっているボーデン湖にも近い自然豊かなエリアにある街です。
街自慢の郷土菓子『ビーバー』は、神聖ローマ帝国(現ドイツ)のニュルンベクの『レープクーヘン』が14世紀末までにこの地の修道院に伝わり、独自の進化をとげたもので、大きいものはA4サイズの厚い書籍ほどもあり、重量は2Kgに達するものも!
円形やハート型も作られて、人物、家紋、エーデルワイスなどのモチーフを彫り込んだ木型に麦粉、蜂蜜、スパイスからなる生地を押し入れ、凹凸レリーフを浮かび上がらせてから焼き上げられます。
300年ほど前には表と裏の生地の間にアーモンドペーストをたっぷり挟んだリッチなビーバーが登場し、この頃アッペンツェラントには34軒もの専門店ができ、最盛期を迎えています。
当時とレシピも製法もほぼ変わらずに作り継がれるビーバーは、油脂を使わないほんのりスパイシーな生地と、レモン風味のしっとりしたアーモンドフィリングのハーモニーが絶妙で、なるほど 時代を超えて愛される訳を実感、納得させてくれる美味しさで、見て良し、飾って良し、食べて良し、もらって嬉しいビーバーは、今でも地域のお祝いやお祭り、クリスマス、大切な方へのプレゼントに欠かせません。
中でも艶のあるボディーに左向きの熊さんモチーフが浮かぶビーバーは、威風堂々地元感が溢れる人気のモチーフで、この熊さん ザンクトガレンや隣接するアッペンツェルの市の紋章と定められ、市旗にも描かれて、縁の深さが偲ばれますが、その由来となる昔語りが残ります。
そのお話は、街の起源となった宣教師にまつわるもので、「聖ガルスは師匠である聖コルンバンとその他の弟子たちと共に、アイルランドをたち、布教をしながらローマを目指していました。その途中、ミューレネン渓谷でうっそうと生い茂る草に足を取られて転んだガルスは、この出来事を「神の啓示」ととらえ、一行から離れてその地に留まります。
彼はこの地に小さな僧院を建てて祈りの場にすることにしたのですが、そこは凶暴な熊が出没して人々を怖がらせている地でした。
ガルスが僧院建設のために木材を集めていると、熊が現れました。そこでガルスが熊にパンを与え、小屋の建設を手伝うよう諭すと、熊はパンのお礼に木材集めを手伝い、その後二度とこの地には戻らなかった…というもの。
このお話の場面は街のあちこちにレリーフとしても残されています。
クマさんたちザンクトガレンや隣接するアッペンツェルの市の紋章と定められ、市旗にも描かれています。
↓(左)ザンクトガレン 市章、(中央)アッペンツェル 市章
ガルスの死から100年…その小屋は修道院へと改められ、街と修道院は聖ガルスにちなんで『ザンクトガレン』と名づけられました。その後修道院はベネディクト派の教義を採用し、文化と科学知識が集結された学問の総本山として中世ヨーロッパにその名を轟かせ、1983年世界遺産に登録されています。
↓ザンクトガレン修道院