シャーフボック・ビバリ … スイス アインジーデルン …

アインジーデルンEinsiedelnは、チューリッヒのハウプトバンホーフ 中央駅)から電車を利用して50分ほど 終着駅にあるアルプスに囲まれた小さな町です。

10世紀に修道院が建てられたことに始まり、スペインの聖地、サンティアゴ・デ・コンポステーラまで続く、聖ヤコブの道と呼ばれるカトリックの巡礼道の中継地として、ベネディクト修道院とその礼拝堂に安置されるブラックマドンナが信仰を集めてきました。

巡礼者はここで祈りを捧げ、休憩してから、さらに遠くスペインの西端にあるサンティアゴ・デ・コンポステーラを目指して歩みを進めるのです。

シャーフボック

修道院の門前で売られて、旅人たちを癒し、旅のお供に、お土産にもと人気を集めてきたシャーフボック。円盤状で、可愛らしい突起が2つ飛び出したそれは、直径3cmから15cmほどのものまで、日本人には甘食を想わせる姿と蜂蜜の優しい甘み ポソッと柔らかい食感 控えめなスパイス風味の全てが懐かしく感じられるお菓子です。

修道院に残る文書に『シャーフボックの名が初めて登場するのは1631年 おそらくそれよりはるか昔から門前で作って売られ、日持ちもすることから人気を集め、スイスで最も有名で、最も歴史のある巡礼菓子の1つになっています。

現代のシャーフボックは蜂蜜、砂糖、小麦粉、スパイス(シナモン、クローブパウダー)、膨張剤(鹿角塩)、水を合わせて生地を作り、彫りを入れた木型に隙間なく押し入れて、型抜きしてから、焼き上げられます。

円盤形をした胴体からポツポツ盛り上がる2つの突起は子羊の耳をデフォルメしたもので、その姿は草の中に横たわっている子羊を表しているそう。

イエスは全ての人間の罪を背おい、生贄としての役割を果たした「神の子羊」と呼ばれることから、教会の門前菓子に子羊のフォルムが採用されたのでしょう。名称『Schafböcke』は羊を意味する2つの言葉Schafとböcke を並べ合わせた合成語です。

ビバリ

『シャーフボック』を300年にわたって製造販売してきた老舗『ゴールドアプフェル』で作られてきた、もう1つの名物菓子が2色のビバリで、街のシンボルである修道院や熊さん、エーデルワイスなどのモチーフを彫り込んだ木型に表生地を押し入れ、その上にフィリングをおいてから裏生地をかぶせ、一体化して焼き上げられます。 

『Biberli braun』茶色いビバリの生地は小麦粉、蜂蜜、砂糖、スパイスからなり、中にアーモンドのフィリングがたっぷり入り

『Biberli Weiss』白いビバリの生地はスパイス、蜂蜜を加えずに、小麦粉、卵、砂糖を合わせ、ヘーゼルナッツのフィリングを包み込んでいます。

ずっしりと手応えのある質感で、それぞれフィリングとビバリ生地の相性がよく、リッチで品の良いお菓子です。

ゴールドアプフェル Goldapfel

駅から修道院まで続く道ハウプトシュトラッセ(中央通り)から左にのびるクローネン通り沿いの『ゴールドアプフェル』旧店舗は博物館を併設したノスタルジックなショップになっています。 

店舗の営業時間内に限り、無料開放されているミュージアムは、建物の魅力に加え、家族とお店の歴史が凝縮されて、昔のままを留めた部屋のしつらえ、往時を写した写真、歴代の道具たちは見学者をタイムカプセルに乗せて時を遡る旅に連れて行ってくれる素敵な場所。

歴代の木型たちと1910年と1965年のオリジナルのシャフボイケマシン 現在いちばん小さなシャーフボックは自動焼成ラインに通して機械的に製造され、それ以上大きいものは昔ながらの手作業で1つ1つ作られています。

19 世紀当時名人といわれた店主によって彫り出されたオリジナルの「Tirggel」モデルも展示され、そこにはウイリアムテルや地域の人々、スイスを象徴する動物:熊の擬人化された姿や鳥たちに、魔女まで活き活きとした姿で彫り込まれ、1つ1つに見入ってしまう。これらはまさに家族の宝物であり、食文化の貴重な財産

アインジーデルン

アインジーデルンは、シュヴィーツ州(Kanton Schwyz)のアルプスに囲まれた小さな町 チューリッヒのハウプトバンホーフ(中央駅)からクール方面行きの電車に乗り、チューリッヒ湖畔添いに展開する美しい車窓を楽しみつつ行くこと35分。ヴェーデンスヴィルWädenswil 駅で乗り換えて支線に入り、その終着駅で下車します。全行程の所要時間は50分 車なら30分ほどの道行です。

アインジーデルン修道院

「einsied アインジード」はドイツ語で「隠者」を意味することから、アインジーデルンは「隠者の場所」 名前の由来は修道院の起源に遡ります。

9世紀 修道士マインラートは修道院を離れ、深い森の中で861羽のカラスと共に、神に祈り、聖なる読書をして神に仕える隠者の生活を26年続けていましたが、2人の盗賊に殺害されてしまいます。逃走した盗賊は追跡した2羽のカラスによって捕獲され、彼の庵跡にベネディクト会修道院が建てられました。

15世紀半ば礼拝堂にブラックマドンナが安置されると益々人々の信仰を集め、巡礼者が集まります。19世紀には紙に描かれた切手サイズの黒い聖母像 いわゆる「シュルッケル・ゲリ」や、修道院の土から作られた聖母像が販売され、紙は丸めて、土偶はナイフで擦り落とした粉末をお茶や食べ物に混ぜ込んで摂取することで、神のご加護を受けられると信じられていたそう。

スイス地域最大の修道院は直近からはカメラに納まりきれない壮大さ。

修道院内は撮影禁止のため、実物の映像はお届けできず、エントランス脇に置かれたレプリカと、パンフレットにある写真から想像を膨らませてください。

修道院の別棟では、今でも修道僧達が神に仕え、自給自足をモットーとする暮らしを営み、広大な敷地には修道院が経営するワイナリーや製材所の建物、ヨーロッパ最古の馬の飼育場が点在しています。

クリスマスマーケット

アインジーデルンでは、毎年11月末から聖ニコラウスの日(12月6日)までの9日間に限り、クリスマスマーケットが開かれ、スイス地方で最大級のマーケットにはヨーロッパ中から人が集まります。駅から修道院へと向かうハウプトシュトラッセ(中央通り)沿いに、約100本のクリスマスツリーが飾られて、130軒近くの屋台が軒を連ね、小さな街全体がクリスマスマーケットの場へと化すのです。